アニメが100倍楽しくなるブログ!

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VR技術で映画は作れるのか?

f:id:Brian_T_Spencer:20161024103208j:plain『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ –アルスノヴァ-』がイオンシネマのULTIRAスクリーンで再上映されると聞いて迷わず観に行きました。1年前にも劇場で見たのですが、やっぱりアルペジオはすごい!なんというか、全編が3DCG制作で、今まで他のアニメでは表現しきれなかった、大迫力の艦隊同士の戦闘シーンを描いている、という感じです。

アルペジオのすごさを噛みしめながらの帰り道、僕は3DCGによってアニメの表現の幅も広がったんだなと実感していました。アルペジオほど、3DCGを用いるべきコンテンツに用いて、その技術性能を十二分に生かしたなというアニメはないでしょう。まさに、アルペジオというアニメは3DCGだからこそ可能になったコンテンツだといえます。

3DCGに限らず、新しい技術が開発されるたびに、新しい表現技法やそれに適したコンテンツがこれまでに開発されてきました。次は何が来るのでしょうか・・・?VR技術とか出てこないですかね?もちろん時期尚早ですけど、何十年か後には可能になっている・・・かもしれません。

先日の東京ゲームショウでもVR技術が注目を浴びていましたが、ゲーム業界だけではなく、一般的にも今年1年間で認知度は高まったと思います。そこで、「VR技術を用いたアニメ映画は製作できるのか?」という疑問がわいてきたのです。

ここで、アニメだけではなく実写も含めた、これまでの映像技術の発展を思い返します。

そもそも、カメラが撮影する二次元の映像は、人間の目がものを見る光景とは全く異なります。通常、人間のものの見方では視野の中の注目した一部分のみを切り取る一方で、映画では画面に入っている範囲すべてにフォーカスしています。さらに、映画では映像が一瞬で切り替わりますが、人間の目が見る光景は常に連続的です。そして決定的に違うのが、映像の向こう側と観客のいるこちら側が空間的に完全に分断されていることです。映画の草創期の逸話で、蒸気機関車が向かってくる映像を観客に見せたところ、観客は映像の中の蒸気機関車が自分たちの方に本当に走ってくると勘違いして劇場から逃げ出そうとしてしまった、というのは有名な話です。

カメラの写す映像と人間のものの見方の差が違うから、その差をうまく埋めるために、ハリウッドなどで映像の演出の技術が生み出され、その結果、我々はストレスを感じずに映画を楽しめるようになったわけです。逆に、それが上手く行かないと、観客は不自然さを覚え、映像がしっくりと頭に入ってきません。(素人が映像作品を作った時の不自然さを思い出してください。)今日の私たちが、すんなりと映画だとかドラマだとかを楽しめるのは、昔から培われてきた演出技術や色んな創意工夫のおかげなんだと思います。

さて、これまでの映像技術は、観客が映像世界と切り離されていることを前提としています。今日僕が見に行ったULTIRAでさえ、コンセプトには「映像の中にいるような感覚」と銘打っているものの、作品世界にいるような臨場感を味わうことが目的であり、空間的に観客と登場人物が同じ場所にいるわけではありません。

その点で、VR技術による映画は従来の映画とは決定的に異なります。既存の映画では、観客が物語の展開される世界の外にいる一方で、VR技術では観客が物語の世界の中に存在するという違いがあるからです。従って、VRを使った映画で何か物語を描こうとすると無理があります。遠くから登場人物たちを見ているならまだしも、近くに寄った時、どうして登場人物たちは、観客に気づかないのか。また、銃弾が飛び交う激しい戦闘シーンの中、観客はなぜ無事でいられるのか。明らかに不自然です。

それでもなお、映画でVR技術をどう活用するかを考えましたが、正直何も思いつきませんでした。例えば雄大な自然の風景をドローンで360度撮影をしたものをVRで移して、観客に空を飛んでいるように感じさせる映像などは作れそうですが、それくらいですかね・・・。

ただ、映画ではなくて、芝居ならVR技術で代替可能だと思います。芝居では、空間的に物語世界と観客がつながっており、観客が観ているという前提で役者は動いているからです。従来の二次元の映像で芝居を映しても物足りませんが、それをVRで再現すれば、芝居の再現度は上がるかもしれません。(果たして、目の前で生身の役者が演じていない芝居を見ることにどれだけの価値があるかは疑問ですが)。

しかし、映像技術の発達により、映画という表現技法やそれに適したコンテンツが生み出されたように、そして、3DCGの技術により、アルペジオのような3DCGが生かされるコンテンツや表現技法が生まれたように、VR技術が発達することで、今まで誰も予想していなかったような新しい表現技法やVRならではのコンテンツが出てくるかもしれません。上に挙げたVRによる映像の不自然さを克服するような創意工夫やVRだからこそ描けるコンテンツがきっと生まれてくるでしょう。それが具体的に何なのかは僕には予想できませんが・・・。