アニメが100倍楽しくなるブログ!

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『聲の形』-他者との繋がりのあり方に気づかせてくれる名作

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※中の人が『聲の形』にあまりにも感動して、この記事は映画『聲の形』に関する中の人の超個人的な感想文になってしまった(公開するかも迷った)ので、普段のようなレビュー記事は別記事として書く予定です。

 

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「もうこんな時間や」

スタバでツイッターを眺めていた僕は急いで荷物を片付け、新宿の人混みをかき分けながら、ピカデリーへと向かう。今回の上映が関東では最終の上演だ。きっといつもより観客が多いことだろう・・・。

 

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上映は深夜0時過ぎに終わった。劇場を出た後、僕はすぐ山手線内回りのホームに向かった。行先表示がいつもの「池袋・上野方面」ではなく「品川」になっている。終電に間に合うように駆け込んだ電車の中で息を整えながら周りを見渡すと、すでに0時を過ぎたというのに車内は人でごった返していた。東京に住んでから数年経つが、こういう大都会の光景にはいまだに慣れない。まだ涙ぐんでいる目をこすりながら、僕は自分の考えを整理し始めた。

 

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<面白くなければ映画じゃない>

語弊がある言い方だが、この映画は聴覚障害や学校でのいじめ問題を「ネタ」にしている。製作陣は、ストーリーに聴覚障害やいじめを組み込むことで、登場人物たちに彼らの感情を激しく動かさせ、ストーリーを紡がせている。観客に感動してもらうという目的のためにだ。だが、自分はそのことに非難の気持ちや嫌悪感は起きない。僕個人の考えとして、そもそも映画やアニメなどの映像作品は、他人の行動を観客がただ「傍観」し、観客が何らかの楽しみ(映画を見るインセンティブや、映画を見た結果感じたことなど)を得るという、ある種のエンターテインメント性を持っているべきだからだ。

例えば、シリア難民の悲劇を描いたドキュメンタリー映画があるとする。観客が感じるのが、同情なのか、憐みなのか、自分じゃなくて良かったという安心感なのか、紛争に参加している様々な主体への怒りなのか、難民のための何らかの行動を実際に起こす決意なのか、懸命に生きようとする人々への感動なのかは分からないが、いずれにしても、観客が映画を観ることで得られた何らかの心や頭の動きを引き起こさせる装置として、難民たちの姿は利用されている。

別にドキュメンタリー映画に限らず、あらゆる映像作品がそうだ。登場人物たちが怪我をして痛い目にあっても、忘れられない感情でもがき苦しんでも、はたから見ている観客には関係ない。その意味で観客は登場人物に対して残酷である*1。観客たちは映像作品を通して、他人の背負っている性(さが)やハードルや問題を眺めることで、それらを利用して自分の心を動かしたり考えたりする。だから、この映画を観てその構造に気づく人たちの中には、この映画のテーマ設定に対して嫌な気持ちになる人もいるかもしれないけど、自分はそうは思わない。

さらにいうと、テーマの軽重は本質的にどうでもいいと思っている。「自分の心の成長や道徳心の向上のために、聴覚障害やいじめがテーマの映画を見よう」みたいな理由でこの映画を観ようとしたのではなく、純粋にアニメオタクとして可愛い女の子が出てくるアニメがいいなと思ったから観たのだ。ツイッターのTLでオタクたちが感動したとかいっていたから、この映画に出会うことが出来た。そして、観た後でさえ、扱っているテーマが重いこの映画を、正真正銘のエンターテインメント性まるだしの他の萌えアニメと同じ列に置いて評価しようとしている。映画の扱っているテーマの軽重ではなく、観た後に満足したか満足していないかで評価したいからだ。

あらゆる要素は作品テーマの軽重によらず、観客を楽しませるためにあり、評価は作品テーマの軽重ではなく、純粋に観て良かったかどうかに依存するべきである。「面白くなければ映画じゃない」という言葉があるが、この言葉を自分はこのように解釈している。

 

<京アニらしい素晴らしい出来>

この映画で評価したい点はこれだけではない。物語が主に将也の視点で進むため、硝子がどんな気持ちなのか、何を考えているのかを、将也だけではなく観客も思い悩むことができる。またストーリー展開についても、この先の展開に観客が興味を引くような仕掛けを施したストーリーテリング(時系列を入れ替えたり、誰からの視点かを変えたりなど)をする一方で、観客がストーリーをきちんと理解できるように無理のない脚本になっていた。正直、粗を探しても見つからないほど完璧なストーリー展開と脚本だったと僕は思う。演出やBGMも物語世界に観客を引き込むのに十二分に役割を果たしていて、劇場で観て本当に良かったと思える作品である。また、小学校時代から現在に至るまで一貫して、登場人物たちの行動や態度にリアリティを感じることが出来た。作画や細かい演出の素晴らしさに関してはいうまでもない。・・・。

いや。違う。僕が本当に書きたいことはそういうことじゃない。いや、もちろん、上に書いた一連の文章も感想の一部ではある。でもどうして僕は感想記事を書くときに、変にこう大人ぶって分析的に客観的になってしまうのだろう。映画のテーマだとか脚本だとか作画だとか演出だとか音楽の入れ方だとか、そういう外枠を指摘したいんじゃない(勿論、そういう外枠を意識して観察することが楽しいときもあるのだが)。それらは作品が僕に何かを与えるための手段や、伝えたいことを入れる容器に過ぎない。僕が書きたいのは、作品を観ているときに自分が素直に何を考えたのか、どんな感情になったのか、という「生々しい」感想なのに。でも、生の感想の多くはその刹那で忘れてしまうし、今残っている生の感想もうまく文章化できないのがもどかしい。それでも何とか書き留めてみる。

 

<妙にリアルな心情表現>

僕がこの作品を観て受けた最大のショックは、将也から何度も酷いいじめを受けても、彼を責めることさえしない硝子のまぶしい笑顔だった。硝子の姿は、京アニの代名詞ともいえる、かわいい女の子描写を通じて描かれている。公式HPでは彼女の笑顔は「愛想笑い」だと書かかれているが、実際は明らかに愛想笑いの枠を超えている。彼女の笑顔は、他の萌え系のアニメに出てくるような、かわいい女の子が仲のいい友達と心の底から楽しく話すときに見せる可憐な笑顔と限りなく似ていた。だからひどい違和感を感じた。彼女は酷い仕打ちを受けて苦しんでいるはずなのに、将也を憎む様子を全く見せず、天使のように笑みを浮かべるという彼女の行動を、僕は全く理解できなかった。それどころか、観客である自分ですら、行動が全く理解出来ない硝子のことを「拒絶」していたのかもしれない。将也を始めとする、彼女以外のクラスメイトたちのように。

だが、そんな僕の疑問は思わぬ形で解けることになる。将也にいじめられた硝子が、将也に優しく微笑えみ、落書きされた将也の机を拭いてあげたのと同じように、結弦に盗撮写真をネットにアップされた将也が、結弦に怒りを覚えることもなく、雨の降る中で傘に入れてあげたときだ。将也の行動は硝子の行動の焼き写しであり、どうして将也がこんなに優しいのかについて作中では明確に説明されていない。しかし、将也がこういう行動をとった理由がなぜか理解できてしまった。硝子の行動の方は理解できなかったのに。

将也の行動は、「自分に悪意を意図的に向けた人間に対しても優しく接するべきだ」といった高潔な精神に由来するものではない。他人とのコミュニケーションを断っている彼にとって、他人からのコンタクトは嫌がらせだろうがなんだろうが、なぜか嬉しく感じられたと考えるほうがまだ妥当である。あるいは、小学校時代に自分が受けた酷いいじめや、現在の環境でも周りの人間は自分を拒絶しているという常に頭にまとわりついている妄想のせいで、将也の心は疲弊しきっており、何が自分にとって辛いことなのかという正常な判断ができないため、結弦のいたずらは軽微に思えたからかもしれない。そして、硝子の行動もおおよそ同じような理由からかもしれないと思い至った。周囲との意思疎通がうまくいかない彼女にとって、周囲と何らかのコミュニケーションを取ること自体が、ありがたく感じられたのだろう。それが悪意に満ちたものであったとしても。さらに、ストーリーは進むと、当時から自分のせいで周りを不幸にしてしまっており、自分は死んだ方がいいとも考えていたことが分かる。

このように、いじめられる側の人間の心情が生々しく表現されており、彼らたちの心情にショックを受けただけではなく、心情表現が間接的にも関わらずその意図をくみ取ることができたことにもショックを覚えてしまった(自分自身の中にも類似の実体験があるのかもしれないと示唆しているように感じられたからだ)。

ところで、作中では過去の将也の行動や彼に降りかかる出来事が、少し形を変えて再度出てくることが多い。さっき挙げた、いじめてくる将也に微笑みかける硝子と、ネットでなりすましをしてきた結弦に優しい将也という構図もその一つである。また、クラスメイトからいじめられる硝子と、彼女の転校後に仲間から裏切られていじめられる将也(いじめの手段まで同じ)という構図もそうである。硝子をいじめたことで将也がみきから非難されるというくだりは2回も観ることになった。こういった展開は、さっき挙げたように、観客たちに登場人物たちをさらに深く理解させるはたらきをする。こういった手法を意識して観たのは初めてだったので自分には新鮮だった。

 

<どこに感動したんだろう?>

さて、僕はこの映画に大きな感動を覚えた。だが、ここで改めて本作のあらすじを考えてみてほしい。この映画を要約するとこうだ。「聴覚障害をもつ女子をいじめていた男子が、女子の方が優しいのにつけ込んで、都合よく仲良くなる話」。しかし、実際の人間模様はそう簡単に割り切れるものではない。そのことはこの作品を観た全ての人が恐らく共通して感じただろう。ここでは次の2点を指摘したい。

1点目はいじめについてである。本作の大きなテーマとして、いじめとそれによって生じたわだかまりの解消があげられる。普通なら、「いじめた側が過去のいじめを反省し悔いることで、何も悪くは無いいじめられた側が、当時と変わらない優しい心でもって彼らを受け入れて、めでたし」というストーリーになるだろう。だが、変わるべきなのは、いじめる側だけではなく、いじめられる側でもあったと本作では説いている。硝子は摩擦を恐れずにもっと自分の気持ちを人に伝えるべきだし、将也は人の顔をきちんと見るべきだとなっている。そこで障害があることが特別扱いされることはない。さらに、突然現れた西宮の扱いに困っていたという植野の意見や、教師も含めクラス全体で将也1人をいじめの張本人に仕立て上げるという陰湿な体制など、そこには単純な善悪論では片付けられない複雑ないじめの背景が描かれている。別に、いじめはいじめられる側にも問題があるからだとかいう曲がった論理で、いじめはいじめる側ではなくいじめられる側が悪い、という結論が言いたいのではない。だが、いじめを含め様々な人間関係の中で、誰が悪いかという議論を超え、各々がどう変わるべきなのかがテーマだと気づいたとき、僕は驚いたとともに、感動を覚えた。

2点目は将也と硝子の関係性についてである。転校した後に初めて二人が出会ったとき、硝子は優しく微笑み、将也にとって都合のいいように話が展開しているように見えたため、観ているだけで居心地が悪く感じられた。しかし、話が進むにつれ、二人の関係性はいじめの加害者・被害者という単純な構図ではないことを知らされた。自分の殻に閉じこもっていた硝子が、将也に生きる理由を与える一方で、硝子をいじめて生きる理由を奪ったともいえる将也が、硝子が生きる支えになる。二人が完全に過去を乗り越えるのはまだ先なのかもしれないが、この先もきっと二人は互いを支えあって生きていくことになるんだろう*2。自分の嫌いな部分も受け入れ、二人が支えあいながら頑張って生きようとする姿に、僕は心を動かされたのだ。今回の一連の出来事で、それぞれの人生がいい方向に向かうことを確信したし、これからの二人の幸せを祈っている。

 

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ここで僕はペンを置いた(って書いたけど、実際はWordで書いているからペンは持っていない)。この駄文を書くのに4時間もかかった。バイトの時給に換算すると、1時間900円だとして、果たしてこの文章に3600円以上の価値があるのかは、かなり疑問ではある(たぶんない)。深夜テンションだと普段よりもさらに酷い文章になるな、と悲しく笑いながら、窓の外を見た。夜明けはすぐのようだ。

・・・と長々と書いてしまいましたが、まとめると、

結論:「植野もかわいいけど、硝子が本当にかわいらしくて素晴らしい映画です。まだの人は絶対に観てください。」

*1:例えば、百合好きなら、同性愛が一般的に受け入れられていないような社会という設定の中で、苦しみながらも愛を貫こうとする2人の百合に感動するだろう。2人が叶わない恋に苦しんでいる様子を見て2人の百合の尊さに感動する。それは残酷な心の働きだと言えないだろうか。

*2:百合だったらここで「二人の関係性はなんて尊いんだろう(歓喜の涙)。早く結婚してほしい。」っていう言葉で締めたんですけど、百合じゃない場合は何て言えばいいんですかね?(笑)(語彙力のない百合厨)

おすすめ百合アニメ【2016年編】その1

2016年(冬~秋クール)のアニメで、百合アニメや百合が出てくる作品をまとめてみました*1。それにしても、2016年秋は百合っぽいアニメが質・量ともに豊作だったため、この記事では冬~夏クールの分を取りあげ、秋クールの分は次の記事で取り上げます。

 

 2016年おすすめ百合アニメと百合レベル

 ◇冬アニメ

紅殻のパンドラ       ☆☆☆★★

 ◇春アニメ

ハイスクール・フリート   ☆☆☆★★
あんハピ ☆☆★★★
田中くんはけだるげ ☆★★★★

 ◇夏アニメ

レガリア
The Three Sacred Stars
not yet ranked〕
あまんちゅ! ☆☆☆☆★
NEWGAME! ☆☆★★★

 ◇秋アニメ

フリップフラッパーズ ☆☆☆☆★
Lostorage incited WIXOSS ☆☆☆☆★
終末のイゼッタ ☆☆☆☆★
ViVid Strike! ☆☆☆☆★
ブレイブウィッチーズ ☆☆☆★★
灼熱の卓球娘 ☆☆☆★★
ろんぐらいだぁず! ☆★★★★
響け!ユーフォニアム2 ☆☆★★★
魔法少女育成計画 ☆☆★★★

 

さて、「百合」という言葉の定義は人によってかなり差があるように思われます。「2人が他の友達よりも特別な親友だと認識している状態は百合である」と捉える人もいれば、「2人が明確に恋人同士だと認識してはじめて百合だと言える」という人もいれば、「女の子同士が仲良くしている時点で百合だ」と主張する人もいます。さらに、セックスを含めるかどうかでも議論が分かれそうです。

さらにややこしいことに、百合という関係性が描かれているといって、直ちにそのアニメ自体が百合アニメになりません。例えば、ごちうさに百合関係が描かれたとしても、ごちうさを百合作品だと言ってしまうのは違うような気がします。

このように、百合という関係性や、百合作品の定義は人によって異なることをふまえ、本記事では、各作品の百合のレベルを☆で表しています。ただし☆の数は百合作品としての優劣ではなく、作品テーマの比重として百合がどのくらい重視されていたのか、明確なCPが設定でき本人たちも友達以上の関係を十分に意識しているかどうか、などが基準になっています(従って、☆が低い作品はそもそも百合作品として評価が低いという意味ではありません)。

 

☆★★★★    百合っぽい関係が少し描かれている(ご注文はうさぎですか?など)
☆☆★★★    百合っぽい関係の描写が多い(きんいろモザイクなど)
☆☆☆★★    百合がメインテーマではないが一つまたは複数のCPが存在する。(ストライクウィッチーズなど)
☆☆☆☆★    明確な百合CPが存在し彼女たちを中心にストーリーが展開される(終末のイゼッタなど)
☆☆☆☆☆    百合がメインテーマの作品(桜Trickユリ熊嵐など)

 

星が2つと3つの作品は、作中ではあまり百合が注目されていなくても、本編と違うところで公式が推していたり、二次創作で百合が描かれることが多いイメージがあります。

逆に星が5つになると、ファンが望む百合的な状況がすでに本編で達成されているので二次創作で新しく描く部分が少ないみたいな感じだと思います。なお、毎クール全ての作品を観ているわけではないので、作品のリストに抜けているものがあるかもしれません。

それではまずは冬~夏クールの作品を紹介していきます。

 

 

◇冬クール

紅殻のパンドラ

百合レベル:☆☆☆★★

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技術の進化によりサイボーグやロボットが一般的になった未来社会のセナンクル島が舞台。世界で初めて脳以外の全身を義体化させた七転福音が、ネコ耳のついた戦闘用アンドロイドのクラリオンと出会い、セナンクル島の秩序と平和を守る話。『攻殻機動隊』と世界観を共有しているにも関わらず、一昔前のアニメを彷彿させるような絵のタッチや、福音の天然キャラ、そして福音とクラリオンのゆるふわな雰囲気は観ているだけで癒されてしまう。アンドロイドとして生きる宿命を背負ったクラリオンと共に生きようとする福音と、降りかかる危険から福音を守りながら福音の夢をかなえようと頑張るクラリオンの姿が印象的な作品。

 

 

◇春クール

ハイスクール・フリート

百合レベル:☆☆☆★★

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人々の大半が海上都市に住むようになった日本で、海上交通の安全を守る「ブルーマーメイド」を目指す女子高校生たちが、航洋艦「晴風」を舞台に、仲間たちと共に様々な困難を乗り越え成長していく物語。30人以上いる晴風の乗員一人一人の様子をしっかりと描くため登場人物が非常に多い。当然、登場人物が30人以上もいれば中には百合カップルも誕生するはずだ(百合脳乙)。有力なCPだけでも、魚雷を撃つのが大好きな水雷長の西崎芽衣と無口な砲術長の立石志摩(メイタマ)、千葉県出身だけど江戸っ子な機関長の柳原麻命と幼馴染みで世話好きな黒木洋美(クロマロ)、ベレー帽を被っていて漫画を描くのが好きな青木百々とツッコミ役で応急長の和住媛萌(ヒメモモ)などたくさんあり、マイナーなCPも挙げるときりがない。

中でも、艦長で主人公の岬明乃と副長の宗谷ましろのカップルは印象的。このアニメは1クールまるまるかかって性格や価値観が真逆な2人が互いを好きになる過程を描くために存在しているといっても過言ではない。(以下ネタバレなので文字反転して読んでください↓

艦長にあるまじき行動を取る明乃をゆっくりとだが理解していくましろと、ましろに助けられながら艦長としての責務を果たそうとする明乃の関係性がいじらしい。第11話で鬱になってしまった明乃に対して、ましろが「あなたのマヨネーズになる!」という名言を投げかけたシーンは感動的だった。控えめに言ってミケシロは最高。

 

 

あんハピ

百合レベル:☆☆★★★

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生まれつき不幸を背負った不憫な女の子たちが、幸せを見つける物語。といっても、コメディータッチで描かれているのでシリアスな話ではない。原作が「まんがタイムきららフォワード」なので、その点は安心してほしい。

きらら系の日常系アニメなので、百合以前に女の子同士のかわいい掛け合いが大きな魅力である。もちろん、明確な百合カップルも存在する。萩生響と江古田蓮のカップルだ(上の写真で背中合わせになっている中で左が響で、右が蓮)。

響はツンデレで負けず嫌いだが重度の方向音痴である。一方、蓮は無意識であらゆる動物のメスを魅了してしまう。2人は幼稚園の頃からの幼馴染であり、方向音痴でいつも道に迷っている響を蓮が連れ戻してあげている。2人は自分たちのことを恋人として認識しないかもしれないけど、デュエットのキャラソンのカバー見たら百合カップルだってすぐ分かる。

 

 

田中くんはけだるげ

百合レベル:☆★★★★

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居眠りばかりしていて、がんばらないで生きようとする田中くんを囲む日常が描かれる。ゆったりとしたゆるふわ学園コメディーであって百合がメインの作品ではないが、サブキャラクターの宮野と越前の2人の百合が尊い(上の写真の1番左上が越前で、その右隣が宮野)。宮野は活発で何事も全力で頑張る小柄な女の子で、越前のことが大好き。越前はヤンキー女子で義理堅い性格だが乙女な一面があり、宮野のことが好き。二人の話がメインの第3話だけでもいいから見てほしい。

 

 

◇夏クール

レガリア

百合レベル:〔not yet ranked〕

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(まだ全話見ていないのでストーリーはよく分からないけど、百合カップルが3組いて、それぞれのペアが一つのロボットに乗って戦うっていう、百合好きが歓喜する嘘みたいな話。ヒロインのユイとレナの姉妹百合が尊い。CGではなく手描きでロボットの戦闘の作画を描こうとしていたり、キャラデザがかわいかったり、作画面では結構すごいっぽい。この点では伊達に放送延期しているわけではないのだ。全話見たら記事を書き直します。)

 

 

あまんちゅ!

百合レベル:☆☆☆☆★

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東京から引っ越して伊豆の高校に入学することになった大木双葉が、スキューバダイビングが趣味で非常にマイペースで不思議な感じ雰囲気をもつ小日向光に出会い、彼女の影響を受けてスキューバダイビングに挑戦する話。

原作の漫画の作者は、『ARIA』の天野こずえさんであり、あまんちゅもARIAに劣らず、時間の経過がゆっくりとして、どこか独特な雰囲気の中で物語が進んでいく。

引っ込み思案な双葉が光と一緒に海に潜ることを目標に頑張る一方で、光は双葉を導いてあげたり助けてあげたりする。キャラデザや演出は癖があるけど慣れてくると面白いので、二人が一緒に海に潜れるようになったかどうか見守ってあげてみて下さい。

 

 

NEW GAME!

百合レベル:☆☆★★★

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2016年のきらら系列のアニメで最もヒットした作品(2期決定おめでとう!)。ゲーム制作会社にキャラクターデザイナーとして新しく就職した涼風青葉が、周りの先輩社員のサポートのもと、ゲーム作りに奮闘する。お仕事系日常コメディという感じ。

きらら系のアニメなので、CPは組もうと思えばいくらでも組めるが、この作品で一番代表的なのは、キャラ班リーダーの八神コウとアートディレクターの遠山りんのカップルである。社会人百合好きからの評価も高いような気がする。

 

→下の記事に続く。

 

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*1:※本記事は百合や百合作品についての他の定義を排斥するものでもありませんし、他のCPの組み方の可能性を否定するものではありません。また推しCPの派閥戦争への参戦の意志はありません。

桜Trick

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【概要】
時期:2014年冬アニメ(2014年1月~3月)

原作:まんがタイムきららミラク桜Trick

作者:タチ

制作:スタジオディーン

 

【あらすじ】

主人公の高山春香と園田優は中学からの親友で、中学卒業後2人とも美里西高校に入学した。しかし、優が初めて会った他の生徒たちと仲良くしている様子を見て、優が大好きな春香は嫉妬してしまう。春香は自分だけが優にとって他の子たちとは違う特別な友達でいたかったからである。そんな春香に優は「じゃあさ、私たちは他の子たちとは絶対しないことをしようよ」と提案する。それに対して春香が答えたのは「キス」だった。 「キス」を通じて深まっていく二人の関係を軸に描かれる、楽しくも切ない、少女同士の口付けの青春の物語。

 

【おすすめポイント 】

百合をテーマにしたアニメの中で最も知名度の高い作品の一つです。毎回キスシーンが盛り込まれることで有名なので、名前だけ知っているという人も多いと思います。 キス要素が一般的に強調されがちなアニメですが、女の子どうしの恋愛を丁寧に描いたラブコメとしてかなり完成度が高い作品です。百合作品ですが、百合作品にありがちな閉鎖的な女子校という雰囲気ではなく、他のきらら原作のアニメと同様、日常的な学校生活を軸にストーリーが展開します。また、演出もすばらしく、コミカルな日常パートと恋心の微妙な表現を引き立てています。

 

【感想】

ブコメ要素のあるアニメでは、二人が少しずつ互いにひかれあっていく様子を1クールかけて描き、最終話でやっと互いの気持ちを認め合う、もしくは、最終話でも互いの気持ちに気づかないままというパターンが多いような気がします(原作を途中までしかアニメ化できないといった事情も絡んでいるんでしょうが)。しかし、桜Trickはそのような中途半端なラブストーリーではありません。第1話の段階で既に、春香と優が明確な好意を確認しており、それ以降、特別な友達としての二人の関係を1クールかけて丁寧に描いていきます。

桜Trickを観て圧倒されるのは、何といっても濃厚なキスを交わす春香と優の姿です。濃厚なキスといっても、官能的すぎていやらしいといった感じではなく、あくまでも他の子とは違う特別な友達であることの確認というプラトニックさを強調することに成功しています。ほんわかとした色調、柔らかいキャラデザ、そして丁寧なキスの描写がこれを可能にしています。さらに、きららっぽい日常系という雰囲気を残しつつも、ときどきセクシーさを感じさせるような演出もあり、リアルさを醸し出しています。

ちなみに、OPではヌード姿になってますが、本編ではヌードどころが、パンチラもありません。単なるファンサービスのような無駄な演出が少なかったことは個人的に好印象でした。

桜Trickの評価すべき点は、キスだけではありません。キス以外のパートでの演出も特徴的です。「物語シリーズ」を彷彿とさせるような演出も多く盛り込まれています。ところどころに視覚的なメリハリをもたせることで、コメディタッチな日常にリズムを与えており、観ている側を飽きさせません。演出の素晴らしさは、シリアスな恋愛模様を描いた場面でも言えます。例えば第1話の前半パート(1-A)では、クラスでのコミカルなやりとりから一変して、空き教室で一人ぼっちの春香に優がやってきて初めてのキスをします。本作で一番印象的なシーンです。そこでは演出や画面の見せ方にも工夫が凝らされていることが分かるはずです。

さらに私が指摘したいのは、必ずやって来る「終わり」を意識させるストーリーになっているという点です。普通の日常系アニメでは、登場人物たちの日常が(あたかも)永遠に続くことを観客に意識させます。本来的に「日常」がいつか終わってしまうことはあり得ないからです。しかし、桜Trickは違います。1話で廃校が決定しており後輩も入ってこないことが述べられ、2話でコトネが高校生活の短さについて言及されることで、彼女たちが送っている高校生活がいつかは終わってしまうことを見ている側に強く意識させます。このことは、ストーリーの後半は美月会長たち3年生の卒業に焦点が当てられている(バレンタイン関連のエピソードすらなかった)ことからも裏付けられます。短くてせつない高校生活という舞台装置の中で、桜Trickのストーリーは展開されているのです。

そのような舞台装置の中で展開される彼女たちの物語には主に二つの軸から成り立っています。

一つ目の軸は、短い高校生活を精一杯楽しもうとする彼女たちの姿です。春香たちの通う高校はすでに廃校が決定しており、春香たちの後には後輩も入ってこなければ、体育祭をする資金すらありません。しかし、そんな逆境の中でも、みんなで素敵な思い出をたくさん作ろうとします。終わりを意識させる舞台装置の中で、なおさら楽しい時間は引き立てられるような気がします。

二つ目の軸は、それぞれの恋愛模様です。春香と優、コトネとしずくのカップルはもちろん、楓とゆず、美月会長と理奈副会長など、それぞれがそれぞれの気持ちを抱えています。それは単なる「恋人」や「友達」という言葉で片づけられるようなものではなく、もっと微妙な関係です。そんな中、いつか終わってしまう高校生活という舞台装置は、作中の世界観では一般的には認められているとはいえない女の子同士の恋愛というあり方や、学生時代という一生のうちでも特別な時期にだけ存在できるはかない恋愛を暗示しているようでもあります。だからこそ、まるでそれに抗うかのように、互いの「好き」の気持ちを確かめあいながら、模索しながら、「他でもない特別なあなた」と一緒に楽しい時を過ごしていく、それが本作のメインテーマになっています。

これらの点から、百合を意識した(もしくは百合好きがCPを組もうと試みる)他の日常系アニメと全く異なり、桜Trickが特殊であることが分かります。

さて、桜Trickでは春香と優がほぼためらいもなくキスをする関係になっており、これに対して違和感を持つ人も少なくはないと思います(私も正直その一人です)。しかし、困惑しているのは視聴者だけではなく本人たちも同様で、美月会長の春香への告白を通じて、春香と優が互いに対して抱く「好き」とは何なのかを問い始めます。結局作中では答えは見出されませんでしたが、美月会長の登場により、単にキスをしあう関係から、キスの意味を問いかけるようになったのは、大きな進歩だったと思います。原作の漫画の連載は以降も続いているようなので、これからも彼女たちの関係に注目していきたいところです。

最後にOPとEDについても触れておきます。電子音とミックスされたボーカルで構成され、どこか幻想的な雰囲気を感じさせるOPと、春香と優が歌うEDは、聞いているだけでもう泣きそうになります。ぜひ何回も聞いて桜Trickの世界に浸ってください。

 

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『桜Trick』上映会「オールナイト一挙上映2 ~夜通しKiss(and)Love~」

f:id:Brian_T_Spencer:20161124174950j:plainあの『桜Trick』が映画館のスクリーンで上映される・・・。『桜Trick』の全話オールナイト上映会が今年も11月22日(「いいちゅっちゅの日」)に開催されると聞き、迷わず応募しました。 桜Trickについて簡単に紹介すると、まんがタイムきららミラク掲載の同名の漫画が原作のアニメで、女の子同士のキスシーンが「毎回」出てくるアニメとして有名です。詳細については桜Trickのレビュー(作成中)も参照してください。10月からdアニメストアでも配信が開始されたそうなので、まだ観ていない方はどうぞ。

さて、イベントは新宿バルトのスクリーン6(収容人数:405席)で22時30分から行われました。来場者特典としてハリーちゃん缶バッジがプレゼントされました。

ただのオールナイト上映会ではなく、冒頭に声優さんのトークショーがあり、相坂優歌さん(野田コトネ役)、五十嵐裕美さん(南しずく役)、戸田めぐみさん(飯塚ゆず役)の3名が出演されました。個人的には、五十嵐さんがしずくちゃんを演じていたことに驚いてしまいました。五十嵐さんといえば、ここ直近のアニメでは、『ハイスクール・フリート』のヴィルヘルミーナや、『ろんぐらいだぁす!』の新垣葵など、低めの声の役のイメージだったからです。本人もトークショーの中で、しずくちゃんみたいな役は最近演じていないからまた演じてみたいと愚痴をこぼしていました(笑)。

さて、トークショーの内容は、西暦と日付から過去の桜Trick関連のイベントを当てるクイズでした。私は桜Trickのイベントに全然言っていなかったのですが、今回のイベントも含めてこれまでに何らかのイベントが放送が終了してからも頻繁に行われてきたみたいです。よくよく考えてみると、桜Trickが放送されたのは2014年の冬クールだったので、かれこれ3年近く経ったことになるんですがね・・・。トークを聞いていると、今回の上映会もチケットが販売されてからたった5分で250席が埋まり、結局チケットも完売したのだとか。2期の情報など特に新発表もないまま、オールナイト上映会を開催してこれだけファンが集まるのは、桜Trick恐るべし、といった感じでした。

桜Trickの2期があるなら、ぜひ見てみたいですよね・・・。もちろん芳文社としては新作をアニメ化したいでしょうけど。でも、もうすぐ百合系アニメが流行りだすんじゃないかと私は踏んでいます(コミック百合姫が月刊化したり、Citrusがアニメ化されたりしているのはきっとその表れ)。だからその流れで2期は来るはず。

ごめんなさい、話をイベントに戻します。 さて、トークショーが終わり、いよいよ上映会が始まりました。第1話での春香と優の初めてのキスシーンを、映画館の大きなスクリーンで見るのは予想通り大迫力で、見ているこちらも胸がドキドキしてしまいました。まさに「くちづけにくぎづけ」状態でした。その後、ストーリーはコメディータッチな日常とキスシーンを毎回挟みながら進んでいきました。日常系アニメだけど、他の日常系とは違い、最後にはおわりが来てしまうことが常に意識されていて、でもだからこそ今を目一杯楽しもうとする登場人物たちの送る、たった3年間の短い高校生活。それはどこか夢のようにはかないものなのかもしれません。 最初はどこかチープな音響に聞こえていたOPの電子音も、深夜テンションがひどくなりカフェインでハイになった脳内に、話数を重ねるごとに心地よくガンガン響いていきます。春香たちの素敵な思い出であふれる日常を観ていると、観ている側の私もはかなくて短い夢を見せられているような感覚に陥りました。・・・

最終話が終わったとき、夢から覚めた私は喪失感に押しつぶされそうになりながらも、それに抗うように心の中でつぶやきました。

桜Trickは永遠」

 

 

とまあ、こんな感じで、カフェインの入った濃いコーヒーを流し込みながら、オールナイトで観ないと経験できないような感覚が味わえたのはよかったです。別に酒を飲んで酔っていたわけでもないですし、寝ていたわけでもないです。とにかく、こういう深夜の上映会は体力的にきついという理由で敬遠する人もいるとは思いますが、一度参加してみると、また違った鑑賞(と感傷)ができるから参加してみてね、ということです。私の場合は、「桜Trickは永遠」という名言の意味を噛みしめていました。やはり百合は尊い。

VR技術で映画は作れるのか?

f:id:Brian_T_Spencer:20161024103208j:plain『劇場版 蒼き鋼のアルペジオ –アルスノヴァ-』がイオンシネマのULTIRAスクリーンで再上映されると聞いて迷わず観に行きました。1年前にも劇場で見たのですが、やっぱりアルペジオはすごい!なんというか、全編が3DCG制作で、今まで他のアニメでは表現しきれなかった、大迫力の艦隊同士の戦闘シーンを描いている、という感じです。

アルペジオのすごさを噛みしめながらの帰り道、僕は3DCGによってアニメの表現の幅も広がったんだなと実感していました。アルペジオほど、3DCGを用いるべきコンテンツに用いて、その技術性能を十二分に生かしたなというアニメはないでしょう。まさに、アルペジオというアニメは3DCGだからこそ可能になったコンテンツだといえます。

3DCGに限らず、新しい技術が開発されるたびに、新しい表現技法やそれに適したコンテンツがこれまでに開発されてきました。次は何が来るのでしょうか・・・?VR技術とか出てこないですかね?もちろん時期尚早ですけど、何十年か後には可能になっている・・・かもしれません。

先日の東京ゲームショウでもVR技術が注目を浴びていましたが、ゲーム業界だけではなく、一般的にも今年1年間で認知度は高まったと思います。そこで、「VR技術を用いたアニメ映画は製作できるのか?」という疑問がわいてきたのです。

ここで、アニメだけではなく実写も含めた、これまでの映像技術の発展を思い返します。

そもそも、カメラが撮影する二次元の映像は、人間の目がものを見る光景とは全く異なります。通常、人間のものの見方では視野の中の注目した一部分のみを切り取る一方で、映画では画面に入っている範囲すべてにフォーカスしています。さらに、映画では映像が一瞬で切り替わりますが、人間の目が見る光景は常に連続的です。そして決定的に違うのが、映像の向こう側と観客のいるこちら側が空間的に完全に分断されていることです。映画の草創期の逸話で、蒸気機関車が向かってくる映像を観客に見せたところ、観客は映像の中の蒸気機関車が自分たちの方に本当に走ってくると勘違いして劇場から逃げ出そうとしてしまった、というのは有名な話です。

カメラの写す映像と人間のものの見方の差が違うから、その差をうまく埋めるために、ハリウッドなどで映像の演出の技術が生み出され、その結果、我々はストレスを感じずに映画を楽しめるようになったわけです。逆に、それが上手く行かないと、観客は不自然さを覚え、映像がしっくりと頭に入ってきません。(素人が映像作品を作った時の不自然さを思い出してください。)今日の私たちが、すんなりと映画だとかドラマだとかを楽しめるのは、昔から培われてきた演出技術や色んな創意工夫のおかげなんだと思います。

さて、これまでの映像技術は、観客が映像世界と切り離されていることを前提としています。今日僕が見に行ったULTIRAでさえ、コンセプトには「映像の中にいるような感覚」と銘打っているものの、作品世界にいるような臨場感を味わうことが目的であり、空間的に観客と登場人物が同じ場所にいるわけではありません。

その点で、VR技術による映画は従来の映画とは決定的に異なります。既存の映画では、観客が物語の展開される世界の外にいる一方で、VR技術では観客が物語の世界の中に存在するという違いがあるからです。従って、VRを使った映画で何か物語を描こうとすると無理があります。遠くから登場人物たちを見ているならまだしも、近くに寄った時、どうして登場人物たちは、観客に気づかないのか。また、銃弾が飛び交う激しい戦闘シーンの中、観客はなぜ無事でいられるのか。明らかに不自然です。

それでもなお、映画でVR技術をどう活用するかを考えましたが、正直何も思いつきませんでした。例えば雄大な自然の風景をドローンで360度撮影をしたものをVRで移して、観客に空を飛んでいるように感じさせる映像などは作れそうですが、それくらいですかね・・・。

ただ、映画ではなくて、芝居ならVR技術で代替可能だと思います。芝居では、空間的に物語世界と観客がつながっており、観客が観ているという前提で役者は動いているからです。従来の二次元の映像で芝居を映しても物足りませんが、それをVRで再現すれば、芝居の再現度は上がるかもしれません。(果たして、目の前で生身の役者が演じていない芝居を見ることにどれだけの価値があるかは疑問ですが)。

しかし、映像技術の発達により、映画という表現技法やそれに適したコンテンツが生み出されたように、そして、3DCGの技術により、アルペジオのような3DCGが生かされるコンテンツや表現技法が生まれたように、VR技術が発達することで、今まで誰も予想していなかったような新しい表現技法やVRならではのコンテンツが出てくるかもしれません。上に挙げたVRによる映像の不自然さを克服するような創意工夫やVRだからこそ描けるコンテンツがきっと生まれてくるでしょう。それが具体的に何なのかは僕には予想できませんが・・・。

斉木楠雄のΨ難

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【概要】

時期:2016年夏アニメ(2016年7月~9月)

原作:週刊少年ジャンプ斉木楠雄のΨ難

作者:麻生周一

制作:EGG FIRM×J.C.STAFF

 

【あらすじ】
髪はショッキングピンク、頭部には角のような不思議な装置をつけ、緑色のレンズのメガネをかけているこの少年こそ、この作品の主人公である斉木楠雄である。

男子高校生である斉木楠雄は、超能力者だった。それもただの超能力者ではなく、念力、千里眼、透視、マインドコントロール、テレパシー、予知、瞬間移動、超人的な身体能力など、生まれつき数多くの超能力を使うことが出来る。彼自身は周りから目立つのを嫌がっており、超能力者であることも知られないようにしている。しかし、彼の周りには個性的なクラスメイトたちが集まってきて、さまざまなトラブルが起こる。

 

【おすすめポイント】

超能力者である斉木楠雄の周りで起こる様々なトラブルがコメディーとして描かれています。ナンセンスな内容が中心で、気軽に楽しむことができます。

主人公の斉木楠雄を演じるのは、物語シリーズ阿良々木暦でおなじみの神谷浩史さんです。

放送はテレビ東京系列ですが、おはスタという朝の番組で、平日に1話約5分を毎日放送して、週末の深夜の放送でまとめて5話を放送するという、ユニークな放送形態をとっていました。そのためか、朝の短い時間でも通用する非常にテンポの速いストーリー展開になっており、気軽に楽しめる内容になっています。

深夜放送では、『リゼロ』(2クール目)の直後の枠に入っていました。そのため、2クール目以降、鬱展開に入ってしまったリゼロを観てメンタルに大きなダメージを受けてしまった多くの視聴者は、斉木楠雄を見ることでなんとか回復することができました。私もこのアニメで救われた一人です。

 

【感想】

初めて観たときは、化物語っぽい感じをすごく感じました。主人公を演じる神谷さんの狂言回しに沿ってストーリーが進行するからです。しかし、物語シリーズのように可愛いヒロインが出てくる気配はいっこうになく、出てくるのは風変わりな両親や変なクラスメートばかりで、怪異の代わりには止まることのないギャグの嵐が続きました。このギャップが面白かったです。恐らく神谷さんをキャスティングしている時点で製作陣は狙っているんでしょうか。

制作を見てみると、EGG FIRM×J.C.STAFFとなっています。EGG FIRMは2015年に設立されたアニメプロデュース会社で、これまでにも『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』や『GATE -自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり-』などのプロデュース協力をしてきましたが、本格的にアニメーション制作に乗り出すのはこの作品が初めてのようです。これからの動向が期待できそうです。

ところで、今期は超能力ものとしてもう一つ『モブサイコ』がありますが、『モブサイコ』の主人公のモブは性格や生き方が不器用な一方、斉木楠雄は賢く生きているので、同じ超能力者でも人それぞれの人生を送るんだなと勉強になりました(?)。

ギャグアニメとしては申し分のない作りだと思います。作画の雰囲気も良い意味でギャグアニメらしい適当さがあふれていますし、オチもうまく作られています。アニメファンだけではなく、様々な層にも受けるように、なおかつ、短い時間の中でもストーリーを完結させており、完成度の高い作品だと思います。

正直、こうして真面目にこの作品のレビュー記事を書いているのがバカみたいに感じるほど、この作品はナンセンスを気軽に楽しむための作品です。逆に、ナンセンスを気軽に楽しめない人にはおすすめできません。

NEW GAME!

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【概要】

時期:2016年夏アニメ(2016年7月~9月)

原作:まんがタイムきららキャラットNEW GAME!

作者:得能正太郎

制作:動画工房

 

【あらすじ】

主人公の涼風青葉は、高校を卒業後、ゲーム制作会社「イーグルジャンプ」に、キャラクターデザイナーとして就職した。そこで青葉の直属の上司になったのは、青葉が小学生時代に夢中になったゲームである『フェアリーズストーリー』でキャラクターデザイナーを務めていた八神コウだった。憧れだったキャラクターデザイナーのもと、青葉は新入社員として慣れないながらも、周りの先輩社員のサポートのもと、仕事をこなせるようになる。

 

【おすすめポイント】

「今日も一日がんばるぞい!」のセリフで有名な作品ですが、実はこのセリフは原作の漫画でも1回しか登場していません。アニメでも登場するのは一度きりだそうです。公式Twitterなどの宣伝ではよく使われているんですけどね。

多くの日常系アニメでは登場人物たちが高校生や中学生という設定なのに対し、この作品では、職場を舞台として、お仕事要素を盛り込んでいるのが大きな特徴です。

当初は、「ほのぼの社畜漫画」というコンセプトが予定されていたようですが、可愛いキャラたちの楽しい掛け合いが続くコメディー作品に仕上がっています(とはいえ、作中ではさらっと流されていますが、残業や会社での寝泊まりが多い人もいるみたいです)。

 

【感想】

3か月くらい前に、普段日常系アニメをあまり見ないある友人に、「可愛い女の子がたくさん出てくる日常系*1アニメでオススメってある?」と聞かれてしまい、答えに窮したことがありました。

例えば、代表的な日常系アニメとして、最近よく引き合いに出されるのは、『ご注文はうさぎですか?』、『きんいろモザイク』、『ゆるゆり』などがありますが、萌えに媚びていると受け止められてしまうシーンが多いと感じる人も少なくないはずです。かといって、『ゆゆ式』や『キルミーベイベー』などはギャグの方向性が独特なので万人向けではないと思います。『ARIA』や『のんのんびより』などの作品はストーリーのテンポがゆっくりすぎて、つまらないとか眠たいとか言われるかもしれません。もちろん、『桜Trick』なども百合要素が強いので初心者には向きません。

しかし、『NEW GAME!』は、萌え系やCGDCTのジャンルの日常系アニメを見たことがないけど、どんなものか1回観てみたい、という人にまさにお勧めのアニメだと思います。というのも、可愛いキャラたちの日常を描いているコメディなのですが、萌え要素に媚びているわけでもなく、ストーリーにも起伏があり、百合要素もあるかもしれないけどそんなにないし、何より内容がしっかりあります。まさに、このジャンルでトップを走り続けているきらら系アニメの一つの完成形ともいえます。

ストーリーに関しては、実際に会社に入った新入社員が出くわしそうな話ばかりで、共感しやすいと思います。毎回の話にそれぞれテーマが設定されており、話もテンポよく進みます。それでいて、一つ一つのキャラの仕草も可愛く描写されており、CGDCTとしても充分に楽しめると思います。主人公の周りの個性豊かな登場人物たちとの面白い掛け合いも楽しめます。制作会社を見てみると、最近では、『ゆるゆり』や『干物妹!うまるちゃん』、『三者三葉』などを手掛けた動画工房とあり、さすが動画工房だなと感じました。

ゲームのキャラ作りの仕事に奮闘する青葉を応援するとともに、自分自身も、明日も頑張るぞい、と元気になれる、いい作品だと思います。

*1:ここでいう「日常系」とは、まんがタイムきらら系列の日常系のアニメだと思ってください。「日常系アニメ」と一口に言っても、いったいどこまでが日常系アニメなのかについては、自分の中でもまだ答えが出ていない状態です。