アニメが100倍楽しくなるブログ!

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『プリンセス・プリンシパル』case順上映会&トークショー

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2017年10月27日に開催された『プリンセス・プリンシパル』case順上映会に行ってきました。今回の上映会はトークショーが(しかも3回も)ついており、とても楽しい時間を過ごすことができました。テレビ放送時とは異なりcase順での上映でした。タイムスケジュールは以下の通りです。

 

15:00~16:40 上映(case1・2・7・9)

16:40~17:10 トークショー第1部

17:10~17:20 休憩

17:20~19:00 上映(case11・13・16・18)

19:00~19:30 トークショー第2部

19:30~19:40 休憩

19:40~21:20 上映(case20・22・23・24)

21:20~21:50 トークショー第3部

 

 以下、トークショーの内容について書いていきたいと思います。

(間違いなどがあれば指摘してくだされば大変嬉しいです)

 

トークショーが始まる直前、司会の方から様々な注意事項とともに、各トークショーで来場者から質問を募るコーナーがあるが、2期や続編についての質問を控える(気になる人は秘密のレポートを聴くようにとのこと)ように言われました。

 

トークショー第1部では、監督の橘正紀さん、音響監督の岩浪美和さん、プリンセス役の関根明良さん、ベアトリス役の影山灯さん、チーフプロデューサーの湯川淳さんの5人が登場しました。

一通り自己紹介が終わった後、最初に音響監督の岩浪さんがいきなり「2期や続編はどうなんすかね」と質問。これに対してプロデューサーの湯川さんは、今度の4月のイベントまでにいい報告ができるように頑張っているけど、あと一声欲しいと回答。「本当にもうあと一声なんです」「この劇場にいる方が全員買ってくれれば行けます!」

円盤のDMもそこそこに、話題は音響の話に。今回の上映会の音響は実は岩浪さんが特別にセッティングしたもので、スクリーンの真ん中と劇場後方からも音が出るように、もともとのステレオ音声を調整したそうです。トークショーの打ち合わせよりも気合を入れていたとか(笑)。岩浪さんいわく「スマホから映画館まで」対応できるような音作りをしたそうです。確かに、上映会では銃や刀などの戦闘や機械音、環境音がリアルに聴こえ迫力が凄い印象でした。

アフレコのときの裏話もとても面白かったです。プリンセス役の関根明良さんは、プリンセスを演じる時に、"ロイヤルさ"を出すのに苦労したそうです。岩浪さんからも「ロイヤルが足りない!」と言われたみたいです。ただ、完璧なプリンセスも時にはロイヤルじゃないときもあるので、そういう時は「ロイヤル度40%」「ロイヤル度60%」などの指示が出されたそうです。他にも、ちせ役の古木のぞみさんは「お前には萌えは求めていないから、侍に徹してくれ」と言われたそうです。それにしても、「ロイヤル、黒蜥蜴成人、お色気、萌え、侍」などプリンシパルのチームはキャラが濃いですね(笑)。キャラと中の人の性格が似ているかについては、「古木さんは違う!」。ちなみに1話のアフレコでマイクの並びが、今村さんと関根さんの間に古木さんがいる順番になったのが、ずっとそのままになったので、古木さんが「私が二人の間に入っていていいの?」と気にしていたそうです。

第11話で「プリンセスの真似をするアンジェの真似をするプリンセス」が出てきたときには、アフレコ現場でアンジェとプリンセスのセリフがごちゃごちゃになって混乱したので、「関根さん」「今村さん」という風に中の人の名前を呼んで区別したそうです。それにしても、アンジェがプリンセスに変装した時は今村さんがプリンセスの声真似を、プリンセスがアンジェに変装した時はさんがアンジェの声真似をそれぞれしているのは凄いですよね。

声真似と言えばベアトですが、ベアトの場合は中の人を入れ替えてアフレコをしています。話題に上がったのは、第4話に出てきた玄田さんの警備員の声でした(実は若本さんが担当する案もあったとか)。「警備員の声」「警備員の声を真似るベアトの声」「警備員の声のまま普通に喋るベアト」という微妙に異なる3パターンを演じ分けた玄田さんの演技は凄かったですね。あと、ベアトが戦闘中やシリアスな場面でときどき見せる可愛い動きも話題になっていました。(戦闘中のベアトのコミカルかわいい場面まとめ動画とか、誰か作ってくれませんかね・・・?)

ちなみに、第1部が終わり5人が退場するときに、関根さんと影山さんの二人が「どすこい」をしながら退場したので、下の状況の再現が見られて凄かったですw

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トークショー第2部では、メカニカルデザイン片貝文洋さん、プロップデザインのあきづきりょうさん、引き続き監督の橘正紀さんとチーフプロデューサーの湯川淳さんがトークされました。片貝さんとあきづきさんは、作中に出てくる様々な道具のデザインを担当されていて、主に片貝さんは大道具を、あきづきさんは小道具を担当されていました。

あきづきさんは本当にたくさんの数の小道具を担当されたそうで、その数は某ガルガンディアほどではないものの、数が多くて大変だったそうです。クリケットの道具などの一回限りの道具から、アンジェのオムレツ(実は昼と夜で違う)、サンドウィッチ、ケーキスタンドもデザインしたそうです。橘監督いわく、オムレツの資料写真だけを渡しても上手く絵にできないアニメーターもいるので、オムレツのデザインも頼んだとのこと。

片貝さんはドロシーたちの車のデザインに苦心したそうです。監督から1910年代とか1920年代あたりの車(このころにはガソリン車が主流でしたが)をイメージするように言われたのはいいものの、ガソリン車と違い蒸気機関の自動車は音が静かなので、このままでは音に迫力が出ないことに。結果、ターボを付けることで、蒸気機関という設定を保ちつつ、迫力あるカーアクションを実現させました。

ところで、よく考えると作品の設定では19世紀末の世界が舞台なのに、車のデザインは1920年代なのは変な気がしますが、そこはスチームパンクという架空の世界なので大丈夫だと判断したそうです。第5話で出てきた蒸気機関車の先頭車両のデザインもかっこいいという理由で1920年ごろのデザインが採用されています。

他にも制作裏話としては、ちせの持っている刀のつばを猫の形にする案が没になったり、初期の段階ではプリキュアみたいな路線も健闘されていて、もしかしたらアンジェの髪の毛がピンクになっていたかもしれなかったそうです。でも、やっぱり髪の毛の色は現実的にする方向になって現在の色に落ち着くことに。そのアンジェのキャラデザですが、黒星先生には自由にデザインしてもらった結果、アンジェがスパイ姿の時にあの目立つ帽子を被り全然忍んでいないので、アンジェのスパイ姿が目立たないような世界作りを心掛けたそうです。 

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第3部では、リサーチャーの白土晴一さん、設定協力の速水螺旋人さん、こちらでも引き続き監督の橘正紀さんとチーフプロデューサーの湯川淳さんがトークしました。第3部では白土さんと螺旋人さんのお二人の話が中心でした。まずはリサーチャーと設定協力が何をする役割なのかですが、作中の設定や脚本や台詞について、時代背景などの観点から、世界観や設定が広がるように助言したり、細かい設定のリサーチをなさっていたそうです。ただ特に2人で役割分担は明確にはありませんでした。

さて、一口にスパイ物と言っても、007からチャーリーエンジェルまで幅広いわけで、「スパイ物とは何ぞや」を問う会議を開き、どのような要素がスパイ物たるかを出し合って、スパイ物という概念のすり合わせをしたそうです(「スチームパンクとは何ぞや」も同様に)。

様々な事物に関して幅広い知識をもつお二人ですが、制作会議では、各国のスパイの違いや各種スパイの役割の違いなど本編に関連しそうな話から、アフリカの政治や下水道の話まで、あまりにもマニアックすぎる色んな話をしたそうで、監督は「濃すぎる話は使えそうなところだけ憶えておいて、あとは耳から抜けていく」「だから何度聞いても新鮮」と言っていました(笑)。お二人も「0.5%でに使われたら上々」だと言っていました。

設定についての会議の時も、この設定がいい!と、お二人で盛り上がることはあったものの、「この二人が盛り上がるということはダメだということ」(湯川さん)とのことで、チーフの権限で却下することもしばしば。没案の中には、「スチームパンクインターネット」(管内のスチームの圧力の違いで信号を送る?!)、「ちせをインド人にする」(この想いは実はガゼルに反映されていたりする)、「蒸気を吹き出すノル公」(ノルマンディー公が背中に蒸気機関の動力を持っていてその力でアンジェを殴る)など、色々あったようです。

当時の実際の洗濯工場の構造や働く人のマニュアルなどもリサーチしたそうで、小さくなった石鹸を固めるために、たわしに石鹸をくっつけて、たわしが滑りやすくなることという細かいところまで作中で描写されていました。また。当時の機械がアメリカ製のものが多かったため、機械に書いている英語を敢えてアメリカ英語にしたそうです。「洗濯工場をベルトコンベア式にした最初のアニメ」だとお二人は嬉しそうに語っていました。

お二人の構想のうち実際に反映されたのがどのくらいかは分かりませんが、お二人のおかげで、例えばモルグや洗濯工場の描写のように、作品世界が豊かになったことは確かなようです。

質問コーナーでは、黒蜥蜴星人の設定は最も初期の段階で大河内さんの中にあったことや、「カサブランカの白い家」の理由は秘密であることや、ちせの出身地が佐賀県になった理由は特にないことなど、様々な裏話が聞けて大変楽しかったです。

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 ↑確かにアメリカ英語になっています。

 

 

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トークショーが終わった後は、最後に様々な告知がありましたが、そこで第3巻のジャケット絵が初めて公開されていました(絵柄はドロシー)。果たして、4月29日のイベントで嬉しい知らせは来るのか、そのためには(ry

 

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【百合SS】【桜Trick】みんなで遊園地デート!のはずが・・・

※本日6月25日は百合の日だと聞いたので、今回はアニメのレビュー記事ではなく、桜TrickのSSを投稿します!

 

 

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春香(今日は優ちゃん、コトネちゃん、しずくちゃん、楓ちゃん、ゆずちゃん、玲ちゃん、るなちゃんのみんなで遊園地に遊びに来ました



楓「ねえ、みんなでお化け屋敷行かない

ゆず「えーそういうのって苦手な人もいるし、私はパスかな~」

楓「ゆず、怖いの苦手なんだ。かわいい~~(´◉◞౪◟◉)」

ゆず「あー、分かったよ、行けばいいんだろ、行けば

玲・るな「私も行きます

ゆず「なんでそんなにやる気なんだ怖いの苦手なら無理する必要ないぞ」

玲・るな(お化け屋敷に入るのってすごくカップルって感じがするからとは言えない・・・)

コトネ「しずくちゃんはどうする

しずく「私はパスで」

コトネ「じゃあ、私もパスで」

優「私も怖いの嫌い」

春香「私、怖いの苦手だけど頑張る優ちゃんの怖がるお化けは全て私が倒してあげるそしたら優ちゃんもお化け屋敷に入れるね

優「うわああー、春香が心配だから私も行く

春香「優ちゃん・・・♡」

春香(そういえば、前の肝試しでは優ちゃんとペアになれなかったし、今回はチャンス



6人がお化け屋敷に入る】


春香(優ちゃんと入ってみたのはいいけど・・・)

春香(優ちゃんが私から離れないから全然前に進まない。これはこれで嬉しいけど)

春香(でも、怖がっている優ちゃん、かわいそう・・・これ以上見ていられない)

優「春香ぁぁ私怖いよう

春香「優ちゃん、落ち着いてああ、どうしたらいいかな

優「春香、キスして

春香「えだってここお化け屋敷だよ

優「暗いから誰にも見えないって。だから、キスしよ」

春香「分かった優ちゃんが恐怖を克服するためなら」(春香が優にキスをする)

春香「これで前に進めそう

優「もう少し、もう少しだけ・・・」

春香「分かった・・・」

春香「ねえ、優ちゃん」(春香が唇を離す)

春香「私ね、強がっていたけど、本当は優ちゃんと同じくらいお化け屋敷が怖いんだ」

優「私も。でも春香と一緒ならきっと乗り越えられる」

春香「優ちゃん・・・」



ゆず「おい、前にいる二人、抱き合ったまま動こうとしないな・・・」

楓「あー、それはきっと吊り橋効果っていうやつだよ」

ゆず「は吊り橋ここはお化け屋敷だろ吊り橋なんてなかったぞ」

楓(ゆずには吊り橋効果が現れないな・・・。もう少し怖がると思ったのになあ。さっきから全然怖がっていない)

【そのとき、突然大きな爆発音が鳴り響く

楓「きゃああ」(思わず楓がゆずに抱きつく)

ゆず「おいおい、大丈夫かそんなにビビるなよ」

楓(ゆずがいつも以上に頼もしい・・・。って私が吊り橋効果にかかってどうすんだよ



玲「あの、私たち今すごく恋人っぽいことしているような気が」

るな「うん、こうやって暗い中で手をつなぎながら歩くの、なんだかドキドキする」

玲・るな(正直、ドキドキしすぎてお化けが怖いどころの話じゃないし、暗い中だから顔が真っ赤なのを相手に見られないのだけはよかった)


【その頃コトネとしずくの2人は・・・】


しずく「ねえ、何でコトネはお化け屋敷に行かなかったのコトネはそういうの好きそうじゃん。」

コトネ「私はね、しずくちゃんと一緒に遊びたくてここに来たんだよだから、」

しずく「そうやって、コトネは私に遠慮して自分のやりたいことを我慢しているんじゃないかなって」

コトネ「ありがとう、しずくちゃん。でもね、しずくちゃんと一緒にいることが本当に私のやりたいことだよ」

しずく「本当にそれだけ

コトネ「・・・しずくちゃんは私のことなんでもお見通しね」(コトネが自分の顔をしずくの顔に近づける)

しずく「早くしないと、みんな戻ってきちゃうよ」(コトネとしずくがキスをする)



6人がお化け屋敷から出てきた後、昼ご飯を食べることに】


春香(おひるごはんの時間になったので、各自持ってきたお弁当を食べます)


コトネ「ここの遊園地はお弁当の持ち込みができるの地味に嬉しいね」

ゆず「いやあ、春香が昨日お弁当持ってくるのをリマインドしてくれたおかげで助かったよ~」

春香「優ちゃん、どんなお弁当持ってきた

優「春香~・・・。お箸忘れちゃった春香がリマインドしなかったせいだよ代わりのお箸持ってきて

しずく「すごい言いがかり・・・。お弁当にはお箸も持ってくるのが当たり前だと思うけど」

ゆず「私、代わりの箸持っているけど」

楓「しー・・・」

優「春香のせいだもん。責任取ってよね。」

春香(どうしよう・・・。あ、そうだ

春香「私のお箸であーんしてあげる

優「」【優の顔が赤くなる】

優「わ、わかった。それで許してあげよう。さ、さあ、早く。」

春香(もう、照れてる優ちゃんもかわいい

【ペットに餌をあげているイメージのSDキャラの脳内イメージが出てくる】

【春香がゆっくりと卵焼きを優の口に運ぶ】

春香「はい、どうぞ♡」

【優は戸惑いながらもがパクっと食べる】

春香(やっぱり小動物のお世話している感じですごくかわいい

春香「私も卵焼きたーべよ

【春香も卵焼きを自分の口に入れようとする】

(あれ・・・、これってもしかして、間接キス!?

優(春香もやっと気づいたか。)

春香(だから優ちゃんあーんしてあげるって言ったとき照れてたのか

春香「パクッ」(いつもの卵焼きの味と少し違う・・・。優ちゃんとキスした時とおんなじ味がする

春香「優ちゃん、おかわりはいる・・・

優「うん」

優「パクッ」(うわあ、最初の卵焼きと味が違う。春香の味だ

優「もっとちょうだい」

【その後、2人はまるでキスをしているような感覚で、どんどんお弁当を平らげていく。】

春香(間接キスだけど、みんなが観ている前で堂々とキスをしているようで、恥ずかしい)

優(春香が悪いんだからね・・・)

ゆず「おい、あの2人食べるスピードが異様に早くないか

楓「そうだね。おなかが減っていたんじゃないかな」

玲(は、もしかして、あれは"間接キス"・・・

るな(見ている私たちまでなんだか照れてきました



春香(なお、お弁当を早く食べ過ぎたせいで、私と優ちゃんはその後おなかが痛くなってしまいました)


おしまい

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ところで、ここ最近の桜Trickの展開が熱すぎませんか?キスをしなくなった春香と優の関係性がこの後どう変化するのか・・・!次回以降も楽しみです。

 



AKIBA'S TRIP -THE ANIMATION-

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【概要】

時期:2017年冬アニメ(2017年1月~3月)

原作:なし(ゲーム『AKIBA'S TRIP』シリーズのアニメ化)

作者:ACQUIRE

制作:GONZO

 

【あらすじ】

懐深く全てを受け入れてくれる街、秋葉原。だが、その裏では秋葉原の平和を脅かそうと”バグリモノ”たちが暗躍していた。古き良きオタク青年である伝木凱タモツがバグリモノと戦う万世架まとめを助けようとしたところ、バグリモノに襲われ瀕死状態になってしまった。仕方なく、まとめはタモツに”セツリゴエ”の儀式を行い、タモツはまとめと同じ"上級バグリモノ"になってしまう。怪しい外人コスプレーヤー有紗・アホカイネンや妹の伝木凱にわかたちと共に、秋葉原を守る自警団として活動することになる。

 

【おすすめポイント 】

物語の舞台が秋葉原とあって、実際の秋葉原の風景が忠実に再現されているだけではなく、実際に秋葉原にある店舗から協力を取り付けることで、実名で色んな店舗が登場します。また、毎回違ったオタク分野がテーマになるので、多様なオタク文化の一端を垣間見ることが出来るのも楽しみの一つです。ストーリーについては、よく分からない設定、ご都合主義、勢いで突っ走る展開が多数存在するも、それすらも自虐ネタとして作品に取り込まれており、今期の作品の中で一番観ていて面白かったと言っても過言ではありません。気楽に楽しめる作品です。

 

【レビュー】
毎回、秋葉原の色んなスポットが多数登場するので、秋葉原の観光ガイドとしても優秀な作品です。

第1話でタモツが摂理越えを経てバグりモノになってしまい、人間ではなくなったと聞いて、意外にシリアスなのかと思いましたが、予想は大きく外れ、ハイテンションで残り12話を駆け抜けていった、という印象です。しかし、秋葉原の防衛を通じてタモツとマヨがくっつくという超王道展開に持っていったので、すっきり終わることができ、エンターテイメント性が高い作品として十分に楽しむことができました。最初はハーレム展開かもと身構えていましたが、杞憂に終わってよかったです。またタモツの性格にも好感が持てました。

トーリーは単純で、最初と最後の話数を除いて、毎回の話が、主人公のタモツが色んなオタク趣味や怪しいアルバイトにのめり込んでいくことで、敵のたくらみがばれて、電気マヨネーズがそれを阻止する、という展開になっています。「オタク」と一言で言っても、一般的なオタク像としてよく出てくるような、アニオタや鉄オタだけではなく、色んな分野のオタクが各話のテーマになるので、オタク文化の多様性を垣間見ることができ、まさにオタク文化の入門編や「オタクあるある」としても楽しめました。

作画に関しては、できるだけ手間を省こうとしているように見えつつも、作画崩壊などはなく、アクションシーンなどでは視覚的にも楽しい仕掛けがたくさんありました。キャラデザも好みだったので、個人的には高評価です。中でも、OPに出てくるアイドル3人組の赤色の髪の子がマヨだと気づいたときは、「マヨめっちゃかわいい!」と叫んでしまいました。

今でこそオタク文化の中心という印象ですが、元々は戦後の闇市が発展した電気街であり、さらにさかのぼれば江戸っ子や神田明神で有名な神田といった昔からの下町も近くにあり、そういった秋葉原の歴史的な事情はマヨの回想シーンにも出てきます。

OPも完成度が高かったと思っています。時代劇的で勧善懲悪の痛快な雰囲気、古いものを残しつつも流行の最先端を行く秋葉原、外人受けするような日本っぽさ、観光地として色んな人が行きかう様子など、実際の秋葉原のカオスさが、サウンドや歌詞、PV映像から感じられました。

ALIBA'S TRIPを観ると、無性に秋葉原に行きたくなります。明日オフの日だから、秋葉原にでも行こうかな・・・。

 

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『ブレイブウィッチーズ』「502の日」オールナイト一挙上映会&キャストトーク

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「502の日」にちなんで、2017年5月2日に『ブレイブウィッチーズ』の第1話~第12話のオールナイト一挙上映会が行われました。最後に第12話が放送されてから約4か月経ち、来たる5月13日に劇場公開される第13話を控えたちょうど良いタイミングで、第502統合戦闘航空団の活躍を振り返ることができました。

イベントは角川シネマ新宿のスクリーン1(収容人数:300席)で22時30分から行われました。チケットも完売しており、人気の高さがうかがえます。

さらに、単なる上映会ではなく、石田嘉代さん(ヴァルトルート・クルピンスキー役)と五十嵐裕美さん(エディータ・ロスマン役)の「クルロス」のお二人のキャストトークが冒頭にありました。中の人の雰囲気がキャラにもにじみ出てくるのでしょうか、お二人の掛け合いがクルロスを見ているようでとても楽しかったです。

石田さんはこの作品で初めて人前でトークをしたり、ニコ生をしたり、キャラソンを収録したので、「私の"初めて"をたくさん捧げた作品」だと嬉しそうに語っていました。

約2年前に行われたオーディションのときの舞台裏の話も聞けて楽しかったです。自分がどの役になると思っていたのかという話題でした。石田さんはクルピンスキー、ラル隊長などを想定されていたそうです。話の中でジョゼさんの「おなかすいたよー」とロスマン先生の名言「あなたはあなたになりなさい」の声真似を披露してくれましたが、声真似がかなり似ていたので会場が笑いに包まれました。一方、五十嵐さんはロスマン先生、孝美あたりを想定していたそうですが、雁淵孝美は出番が少ないから嫌だなーと考えていたそうです(笑)。菅野の「うおおおーーー!」の声真似も迫力があってすごかったです。また、五十嵐さんがロスマン先生役に決まった時は、自分自身もめんどくさい女なので、やっぱりロスマン先生かなと思ったそうです。

その後、続々と発売されているキャラソンの話題も出てきました。ロスマン先生のキャラソンを収録したとき、"エモーショナルに"歌ってほしいという難しい指示に頑張って答えようとして、収録しているときに「なるほど、エモいってこういうことですね!」と言ったところ、「エモいとはちょっと違いますね」と言われたというエピソードがあったそうです。クルロスがペアのキャラソンの収録も控えているそうで、あまり難しくない曲がいいなと言っていました(笑)。

他にも、作中でニパがエイラと仲が良いのを反映するがごとく、ニパ役の高森奈津美さんがエイラ役の大橋歩夕さんのことが好きみたいで、五十嵐さんが高森さんの物真似をしながら、自分は502じゃないのかと突っ込んでいるのも面白かったです。

トークショーの最後には告知として、5月13日公開の第13話や、キャラソン、ブルーレイ、8月19日に開催されるイベントなどが紹介されていました。秘め歌に収録されているボイスドラマや書籍版では、アニメ本編ではあまり絡みがなかった、クルロスやモハジョゼといった、仲良しペアたちの掛け合いがかなり出てくるそうで、「アニメ本編で種をまき、CDや書籍で実を刈り取る」感じだそうです。

さてトークショーが23時30分くらいに終わり、休憩の後、いよいよ本編の上映が始まりました。最初に1話から3話までが上映されましたが、序盤を見るとヒリヒリする展開だったなと改めて思いました。主人公ひかりが周りから低い評価を受け、無力な自分のせいで他の人たちを守ることが出来ず、姉が危篤状態に陥ってしまうなどの経験を経た結果、ひかりが2話の最後でラル隊長に対して「じゃあ死ぬまでいいから入れてください!」と願い出たときには、心にひやりとしたものを感じてしまいました。

休憩を挟んだ後、続いて4話から7話までが上映されましたが、4話を見直すと、最初はひかり以外は誰も本気でひかりが502に残れるとは思っていなかったのだなとひしひしと感じてしまいました。そんな中でニパに仲間だと認めてもらったり、管野に激励されたことはひかりにとって大きな意味を持っていたのだと思います。周りからお前には無理だ無理だと言われ続け、それでも自分を信じてやりとげようとする、ひかりの頑固で諦めが悪い姿勢を、502の他のメンバーたちが受け入れるようになります。ちなみに個人的には5話の下原・ジョゼ回が一番好きです。性格も雰囲気も得意なことも似ていてお似合いな二人ですが、今回の上映会でジョゼさんが下原さんのことを「さだちゃん」と呼んでいることに初めて気づき驚いてしまいました。

再び休憩を取った後、8話から12話までが上映されました。ひかりが復帰した孝美に負け、502から出ていくことになり、10話の最後にひかりが泣いたシーンでは思わず自分も目が潤んでしまいました。その後、12話で接触魔眼を使ったひかりと魔法力を拳に充填した菅野のコンビネーションでグリゴーリを倒したときには、心の底からほっとしました。

さて、今回の1話から8話まではTV放送版ではなくBD修正版でした。OPを始め、修正版は放送版から大きく修正されており、映画館で観ても非常に見栄えするものに仕上がっていました。特に8話の戦闘シーンは放送版よりも大幅に改善されており、満足することが出来ました。この調子で9~12話がどう仕上がっていくのか楽しみです。

ここまで長々と書いてきましたが、一気に全話観ることで気付いたこととしては、各話ごとの脚本もそつがないだけではなく、全体のストーリーの流れが一貫しており、ストーリー構成が明確だという点です。願わくばこれからも502の活躍をアニメで観たいので、2期お願いします!

 

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『ハーモニー<harmony/>』-百合SFの傑作と称すべき作品

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【概要】

時期:2015年秋公開映画

原作:ハヤカワSFシリーズ Jコレクション『ハーモニー』

作者:伊藤計劃

制作:STUDIO 4℃

 

【あらすじ】

「大災禍」を経験した人類は、健康、幸福、社会の調和を極端に追い求めた結果、先進国などでは個人の体が政府に完全管理される超高度医療社会へと移行していた。だが、ミァハ、トァン、キアンという3人の少女たちは、そんな優しさと幸福に満ちたまがい物の世界を憎み、それに抗うために自殺しようとする。だが、自殺を完遂できたのはミァハだけだった。

13年後、真綿で首を絞められるような社会を嫌ったトァンは紛争の停戦監視の任に当たっていた。だが、同時多発的に人々が突発的に自殺するという事件が発生し、キアンも犠牲になる。犯行グループの声明からトァンは死んだはずのミァハの息遣いを感じ、調査を始める。

 

【おすすめポイント 】

夭折の天才、伊藤計劃SF小説が原作。極端な健康、幸福、調和を追求するディストピア的な社会が舞台であり、細かい設定や雰囲気がリアルに設計されているため、本格的なSF映画になっています。

その一方で、ミァハとトァンの百合描写が多く、2人の関係性も本作の大きなテーマになっているので、百合好きにもおすすめです。過去にコミック百合姫での連載が検討されていたくらいです(結局、月刊ニュータイプで連載されることになりましたが)。2人の関係性が尊いです・・・。

 

【レビュー】

ディストピア的世界観をどう受け止めるべきか〉

健康的で社会の調和を極端に重視し、WatchMeによって監視され牢獄のような社会になった日本などの先進地域。一方で、殺戮が行われ女性や子どもがレイプされるチェチェンなどの紛争地域。どちらも地獄のような世界です。あなたならどちらを選ぶのでしょうか。トゥアレグ族バグダッドの塀の外側の人々のように、中庸を模索しようとするのでしょうか。それともそれらを超えた「向こう側」へ行こうとするのでしょうか。

医療機器や情報処理技術の向上により、自分の体がサーバーを通じて政府に管理される社会の到来はそう遠くないのかもしれません。現にウェアラブル端末の開発や脳科学の発達など、既にその兆しは見られます。そうした管理社会への態度は大人と子供で異なるようです。大災禍を憶えている大人たちと違い、体が成長していく様子が監視され、大人になれば自分の体がもはや自分のものではなくなる社会を拒絶した子どもたちの自殺が相次ぎます。

 

〈ミァハとトアンが採った選択とは〉

物語はトァンが事件の調査をしながら、隠されたミァハの過去を探っていく過程を軸に、子どもの頃にミァハと過ごした時間を振り返りながら進んでいきます。

先天的に「意思」を持たなかったミァハが意思に目覚めたのはあまりにも悲惨な状況でした。チェチェンの薄汚れた売春施設で、ロシア軍兵士にレイプされながらトカレフを口に突っ込まれたとき、ミァハの意思は生まれました。その後ミァハは日本で保護されるも、閉塞した社会に憎しみを覚え、それに反抗するために自殺未遂に至ります。

自分の体がほしいままに凌辱された紛争地域と、自分の体が政府に完全管理された社会。両極端に異なった2つの地獄を経験したミァハは、人類社会に復讐するためにハーモニー計画に関与するようになります。もしかすると、それは復讐だけではなく、他ならぬ彼女自身が意思を持たなかった幼い自分へ回帰したかったからかもしれません。突然現れた意思という存在を持て余してしまい、そして意思をもった彼女にとって世界は常に残酷だったからです。

そんなミァハと再会したトァンは最終的に彼女の願いを受け入れます。しかし、トァンの愛していたミァハは、社会に憎しみを覚え抗おうとしていた、自分の意思をもったミァハでした。結果、トァンはミァハの殺害を決意し、ミァハも微笑みながらそれを受け入れます。

ミァハを殺害した後トァンはどうなったのでしょう。今度こそミァハと共に心中できたのか、それともその後も生きながらえて意思を奪われたまま生き続けたのかは分かりません。しかし、私にはこの疑問を突き詰めることに本質的な意味を見出しません。なぜなら、意思を失い全てが自明となった人間は死んでいるのも当然だからです。

最後に、ハーモニープログラムが実行され、人々の意思が消え、摩擦もなく滑らかで優しい世界が完成する様子をキァンが見届けます。トァンの思想を否定し、超健康社会の中でトァンへの自責の念で苦しんでいたキアンが、世界が完全に自明なものになっていく様子を見て何を思ったのかは想像するしかありません。

 

〈文学作品をどう映像化するか〉

最初に私が驚いたのはミァハの声です。トァンの回想の中で初めてミァハの声を聞いたとき耳がざわつくのを感じました。確実に狂っている、けれど美しくて、ずっと聞いていたくて、余韻が頭に残る声でした。トァンだけではなく、自分自身も気をしっかり持たないと魅惑されてしまうような雰囲気が漂っていました。

難解なテーマを扱っているためか、全体的に無駄な情報を一切そぎ落とし、演出を極限までシンプルになっています。また、超高度医療社会の不自然さがよく表現されています(特にトァンとキアンが食事をするシーン)。

また、他の人物が主体であるシーンは全くなく、トァン自身の体験や回想しか画面上で表現されていません。普通なら、他の人物視点のシーンや回想シーン(ミァハの凄惨な過去や父親のヌァザの研究の様子やキァンの普段の様子など)が映像化され、その人と映像を観ている観客のみが映像を共有し、トァンが観ることはありません。しかし、そういった演出を排除し、敢えて視聴者もトァンと同様に、語られる言葉のみからそれらを想像する余地を残しており、文学的な雰囲気も残しています。

一方でアニメだからこそ成しえる表現もありました。最後の10分で、2人がチェチェンの軍施設で再会し、語り合い、ミァハが殺害されるシーンは、演出が秀逸で心が動かされました。物陰からミァハが飛び出し、かつて自分がレイプされたベッドの上で妖精のように飛び跳ねながらハーモニー計画を告げる。朽ち果てた売春施設の中で、光り輝くミァハと暗闇に佇むトァン、そしてミァハに導かれるように光の中に出てミァハを受け入れ、共に「向こう側」へ旅立っていく。その様子が視覚的にも余すところなく表現されていました。

 

〈トァンとミァハの関係性の尊さ〉

最後にトァンとミァハの関係性について述べます。この作品はSFとして来るべき超高度医療社会への問題提起という要素もありますが、物語を動かしているのはトァンとミァハのエゴです。社会に復讐しようとするミァハはもちろん、トァンについても関心事はミァハのことだけであり、世界を救ってほしいという父親や上官の願いを裏切っています。これは世界の行く末よりも自分たちのエゴを優先しようとする百合の物語であり、そうした視点で見るとまた違った楽しみ方ができます。2人のエゴ的なあり方は、外部に対してだけではなく互いにも向けられており、ミァハがトァンを呼び出して自分の計画を押し付けるのも、最後にトァンがミァハを殺害する点に見出すことができます。

ヒルなふりをしているけれど本当は臆病で、ミァハへの憧れや愛情を隠せないトァン。一方で自分勝手でカリスマ性にあふれていてクールだけど、「向こう側」へ一緒に行く人を求め、自分を理解してくれるトァンに依存し彼女を求めていたミァハ。意思をもったまま2人がある意味では"添い遂げる"ことができて本当に良かったです。

2人の百合を見ていると、様々なものを感じ取ることができます。少女特有のけだるさ、社会への反抗心、友情とも憧憬とも区別できない感情、ずっとこのまままどろんでいたい感じ、狂っているけど素敵なことに心酔する様子、互いの存在を確かめるかのように体を寄せ合うときに見せる恍惚とした表情など、はかなくも美しいものがたくさん散りばめられていました。そうした尊くも世界を破滅へと追いやった2人の百合の在り方について思いを馳せるのもいいかもしれません。

 

公式ホームページ

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聖クロス女学院物語

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【概要】

著者:南部くまこ

イラスト:KeG

レーベル:角川つばさ文庫KADOKAWA

【あらすじ】

カソリック系の聖クロス女学院中等部の1年生は、上級生と文通できる習わしがある。だが、文通の相手が誰なのかを知ることはできず、もしバレてしまうと「運命」(デスティーノ)が途絶えてしまうらしい。だが、初等部から中等部に入学した「持ち上がり組」の主人公の松本陽菜は相手が知りたくてたまらない。そんな彼女は、「受験組」の美人だけどちょっと変わった青柳花音に「神秘倶楽部に入部すればわかるかもしれなくてよ」とユーワクされて・・・。

 

【おすすめポイント 】

厳格なカソリック系のミッションスクールの女子校を舞台に、憧れの上級生のお姉さまとの文通、幼なじみとの友情、新たな同級生たちとの出会いなど、百合を感じさせる様々な関係性が、中等部に入学したばかりの初々しさの中で丁寧に描写されています。ミッション系の女子校から連想される独特で厳かな雰囲気や、憧れの先輩との文通という幻想的な情景の一方で、入学したての初々しい女の子の心情や年相応な考え方がキラキラとした文体の中でリアルに描写されているのも特徴です。素直な性格の陽菜やミステリアスな花音もかわいいのでおすすめです。

 

【感想】※2巻以降は未読です

幼馴染を大事に思ったり、幼馴染とお揃いのおメダイをなくしてしまい悩んでしまう主人公の陽菜も可愛いのですが、花音の方もシスターの前でも堂々としていて行動力もあるのに憧れの先輩の前では緊張してしまったり、論理的な思考をするのに神秘的なものに惹かれてしまったりなど、ギャップが印象的でした。2人の間にはまだまだ溝がありますが、陽菜に新しい世界を見せようとする花音と、段差を踏み外さないように花音を気遣ってあげる陽菜の2人がこれからどう打ち解けていくのか楽しみです。

 

児童書レーベルの角川つばさ文庫の作品で、色んな人々と出会いながら主人公が成長していく様子がストーリーの軸になりそうです。また、主人公の心情が丁寧に描かれていて、洗練された立ち振る舞いをする先輩方への憧れ、新しい環境への気おくれとワクワクが入り混じった気持ち、「持ち上がり組」と「受験組」の間に必要以上に差異を感じてしまうところ、シスターや先輩方の前ではお行儀よくしなくてはと自戒するところなど、まだ子供らしさを残す感性や考え方に新鮮さを覚えました。

 

中でも、引っ込み思案な幼馴染に遠慮した主人公が、新しい友達を作ることや幼馴染と違うクラブに入ることを躊躇する様子には、「中学生くらいの女の子ってこういう人間関係ですごく悩みそう」とかなり共感してしまいました。昔、自分の妹が母親に同じようなことを泣きじゃくりながら相談していたことを思い出したからです。大人から見れば深刻な問題には見えなくて、(特に男からすると)どうしてそんなことで悩んでいるのかもよく理解できないけど、本人にとっては大事な問題なのだろうと思います。その点で、メインの読者層である少女たちに寄り添おうとした内容になっているように感じました。

 

百合が感じられる内容になっていますが、主人公の陽菜を取り巻く関係性は、誰かとくっつけてCPにできるような単純な枠組みでは語ることはできなさそうです。小学校からの大親友の奈々、憧れの史織先輩、変わり者だけど何か引っかかる花音など、これから陽菜が重層的で豊かな人間関係を築いていくことが予想されました。単純な百合展開が前提ではない青春ストーリーとして、彼女たちがどう変わっていくのか、この先の展開が楽しみです。

 

ところで、親友に遠慮して新しい友達関係を作るのを躊躇してしまう状況って、どこかで見たような気が・・・、それって桜Trickだ!桜Trickでは親友2人が「他の子たちとは絶対にしないこと」としてキスをする関係になるわけですが、この作品では陽菜と奈々はどんな選択をするのでしょうか。続きが楽しみです。

 

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『ひるね姫』-技術社会へ問題提起する爽快ロードムービー

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【概要】

時期:2017年冬公開映画

原作:―

作者:―

制作:シグナル・エムディ

 

【あらすじ】

時は2020年の夏でTOKYOオリンピックの開会式3日前。田舎に住む女子高生の森川ココネは父親のモモタローと2人暮らしで、勉強が苦手だったが快活でどこでも眠れるという特技を持っていた。だが、最近同じような夢ばかり見るようになり、やがて夢と現実がシンクロしはじめる。そんなある日、なぜか突然モモタローが警察に捕まってしまった。父親を助けるため東京に向かうココネの夢と現実をスリリングに行き来する冒険を通じて、ココネは私の知らない”ワタシ”を見つけることになる。

 

【おすすめポイント 】

君の名は。』でも夢がストーリーの重要な鍵になっていましたが、この作品では夢がまた違った意味をもっています。夢世界がまるで鏡のごとく現実世界を写しとっており、夢世界の事象が現実世界の何を暗示しているのかを推測するのが楽しかったです。また、夢と現実を頻繁に行き来しながらストーリーが展開されている点も特徴的です。内容としては父親を助けるために東京へ向かうココネのロードムービー的な要素が強いですが、メッセージ性が高く現代の技術社会への問題提起もしており、個人的には工学部生としても色々考えさせられました。

 

【レビュー】

とにかくココネが可愛かったです!あと熊のぬいぐるみのジョイにも萌えました。それだけでも観る価値があります。

〈ストーリーの解説〉

夢と現実の間を何回も行き来しながらストーリーが展開していて混乱している方も多いと思うので、ストーリーを解説しておきます(長いので必要ない人は飛ばしてください)。

まずは本編が始まるよりも前の出来事を振り返ります。ココネの母親の森川イクミは志島自動車の会長の娘で、自動車の自動運転の基礎的なプログラムを書き上げました。しかし、会長を含む他の経営陣の反対にあい、会社に失望し退社します。その後、父親のモモタローと半ば駆け落ちする形で姿を消します。退社後も父親や他の同志たちと共に自動運転の研究を続けますが、ココネを生んだ後に会長と和解しないまま事故で亡くなってしまいます。

その後、会社は自動運転の開発に乗り出しますが、父親は自動運転のオリジナルコードを会社に渡そうとはしませんでした。そのため自動運転の開発はうまく進みませんでしたが、娘への贖罪を果たそうとする会長の強い意向によって、できるあてもないのにTOKYOオリンピックの開会式での自動運転のデモを引き受けることになります、そんな会社の危機的状況に乗じて、渡辺(ヒゲ)が父親からオリジナルコードの入ったタブレットを奪い、会社の救世主となり会社を乗っ取ろうと計画したのです。しかし、渡辺の計画はココネたちの活躍によって潰えてしまいます。結果、ココネは自分の手で会長にタブレットを渡し、物語は大団円で幕を閉じます*1

次に夢のおさらいをします。現実の話と交互に出てくるハートアイランドでの冒険の夢は、ココネや幼馴染のモリオが父親から聞いたおとぎ話が元になっています。そしておとぎ話はココネの両親の過去の物語の隠喩に他ならなかったのです。おとぎ話では、ハートアイランド(会社)を治める王(志島会長)の一人娘エンシェン(イクミ)が魔力(自動運転技術)を使えるようになります。そのため、魔法を嫌う王様は姫を幽閉します(イクミが退社する)が、城を抜け出した姫は海賊っぽい男(モモタロー)と組んで、黒い敵をやっつけたり、魔法の開発を進めるなど、楽しい冒険をします*2

しかし、ココネが新幹線の中で見た夢の中でエンジンヘッドから転落するエンシェンが母親のイクミの姿になり、ココネはおとぎ話の主人公のお姫様が自分ではなく母親であったことに気づきます。ココネの夢は、もはや単なる過去の投影に過ぎない物語ではなく、自ら切り開いていくべき、現在進行形の物語になります。

会社のビルの外で会長と会ったココネは、自分が会長の孫であること、オリジナルコードを持っていることを伝える前に、渡辺に捕まりコードを奪われてしまいます。想像の域になるので詳細は不明ですが、ビル内の高層部でココネが渡辺ともみ合っているうちにタブレットが落下してしまい、タブレットを掴もうとしたココネは転落してします。落ちていく中で、(まるで死を悟った人間が見る走馬燈のように)ココネの意識はもう一度夢の中に落ちていきました。しかし、駆け付けた父親と自動運転中のハーツのおかげで無事救助されます。

 

〈エンターテイメントとして申し分ない出来〉

長くなりましたが、以上がストーリーの概要です。家族の分断と再生という、(吉本新喜劇でもよく出てくる)王道ストーリーが、説明臭くすることなく描かれて作品になっています。少しずつ情報を提示することで(しかもそのタイミングが的確)、観客も色々考えながらストーリーを追いかけることができます。そうやって観客を丁寧に誘導しつつも、急展開を挟むことでストーリーに緩急をつけています。特に、ココネが宇宙空間で落ちた直後に、現実でもココネが死にかけているカットが出たときのショックは半端なかったです。

このような物語の展開以外にも観客を楽しませる仕掛けがたくさんありました。家の中に入った渡辺一味に見つからないようにココネが隠密に行動する場面や、空港で渡辺からぬいぐるみとタブレットを取り返す場面など、観客である自分も思わず緊張してしまいました。また、ココネが夢の中と変わらずに現実でも自分の意志で自由奔放に行動している様子も痛快でした。幼馴染と二人で警察や悪の組織からの逃避行とかスリルがあって楽しそうですね。また、逃避行という緊急事態だからこそ、瀬戸大橋での滑空シーンの美しさが際立つようにも感じました。

 

〈夢の中だからこそできる表現〉

さて、この作品は夢という虚構の世界と現実の世界を行き来するのが鍵ですが、夢という題材が作品にどのように生かされているのかを指摘していきます。

夢を使ったストーリーテリングの手法が使われていますが、それが最も顕著に出ているのは、ビルの外でココネと会話していた会長が、ハートアイランドの国王になる以降です。もはや現実に生じた場面を写すことを完全にやめ、ココネの夢という虚構の画面のみで、物語が構成されていきます。この間に現実世界で何が起こったかは想像するしかありません。そして、ココネの夢の中のおとぎ話もフィナーレを迎え、その直後に現実世界のココロの物語もフィナーレを迎えるという仕掛けには驚きました。

夢の中の視覚表現が効果的だったことも指摘しておきます。CGで形成された瀬戸大橋は現実よりもはるかに長くくねくねしていて現実味がありません。そして、夜空の中瀬戸大橋を駆け巡る場面は、観客もその夢を視ているように錯覚し(映画館だとなおさら)、夢の中で感じるある種の万能感や、夢の中でしか存在しえない幻想的な景色を味わうことができました。

また、夢から得られた情報が、過去の出来事を知り将来の行動指針に役立てられていく様子が、世界的に神話や伝承や歌などの形でそれぞれの民族の過去の出来事や教訓が保存されている事実とかぶるような気がすると、個人的には思いました。そういった、遠回りな形で保存された過去は、適切な気付きを得て、実際に使える教訓や行動を指し示すものになります。おとぎ話が母親と父親の物語だと、新幹線の中でココネが気づいた時がそれにあたります。

 

ひるね姫のもつ強いメッセージ性〉

最後に、作品を観ている私たちに対して現代社会に対する強いメッセージを投げかけています。

ハートランドの描写に懐かしさを覚えた人は多いと思います。ハートランドの世界は、ソフトではなくハードが優先的に扱われていた製造メーカーの暗喩ですが、ハートランドの世界はスチームパンク(機械の動力として電気を用いず、蒸気機関のみが動力として使われる架空の世界)ではありませんが、スチームパンク的なものを感じます。それは、スチームパンクの世界もハートランドも現実に存在したもののもはや過ぎ去ってしまった機械文明を映しとったモチーフだという点です。こういう世界観もあるんだという、創作分野における新しい可能性を発見すると共に、このようにハード重視の世界観を「失われた過去の機械文明」だと考えたことは、ハード時代が完全な終焉を迎えつつあるのだなとしみじみと感じました。なんとかヘッドが黒い敵と戦うシーンでも、ソフトの時代を象徴するなんとかヘッドが、ハードの時代を暗示するハートに登場しているのは視覚的にかなりの違和感を感じました。ハードの世界とソフトの世界の間には大きな断層があります。今私たちが生きている社会は、MTからATへ移ったのとは比べ物にならないほどの劇的な変化が進行中なのです。なくなりつつハード重視の製造業への懐かしさを噛みしめながら、誰かこの過ぎ去りつつあるハード偏重の世界観に、「スチームパンク」のような適切な名前をつけてほしいと切に願うばかりです。

ではいったいどんな未来がやってくるのか。そのヒントとして、自動運転が魔法に例えられています。夢の中で魔法でぬいぐるみやバイクに自分の意志を与えている様子はおとぎ話のように感じられます。実際に、バイクのハーツは外部からの具体的な命令なしで*3ココロと父親を助けており*4、あながち夢の中の設定も空想じみたものではありません。「高度な科学技術はおとぎ話の魔法みたいになる」とはよく言ったものです。

しかし、過去や未来の技術社会うんぬんの話以前に夢の中の話が現実社会のきつい風刺になっていて見ていて辛くなってきます。虚構に過ぎない物語における現実の出来事だけではなく、虚構の中の物語における虚構の出来事までもが、私たち観客の現実世界への風刺や疑問提起をしている点。作品の冒頭に登場したハートアイランドの生き地獄のような通勤ラッシュ、理不尽な勤務体制、大量消費社会への疑問、ハード偏重の従来のものづくりなどは、明らかに日本の製造業への問題提起になっています。また、渡辺が自動運転が完成していないことをTwitterでリークした際にも、Twitterが呪いの黒い鳥としてハートランドやエンジンヘッドを襲い、実際に「炎上」させている描写がなされていました。

女子高生が全国を冒険活劇的な内容で、作中を通じて爽快な雰囲気を保ち続けながら、家族の絆を取り戻すというストーリーをなぞりながら、観客に対して技術社会への強い問題提起を行っており、非常に面白い作品でした。設定を東京オリンピック直前というごく限られた時期に限定し、風景などを現実に限りなく近づけることで、物語の中の現実パートが実際の出来事のルポタージュのようでした。恐らく数年も経つと映画の設定が現実世界に正確に当てはまらなくなるため、今と同じような強いメッセージ性を感じることは難しいと思います。

だから、今ぜひこのときにこそ観てほしい。

 

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*1:少し補足すると、会長がココネの存在を知らなかったのは父親が伝えなかったためです。伝える機会はいくらでもあったでしょうか、伝えなかったのは、渡辺に口止めされていた、妻を拒絶した会社と会長に関わりたくなかった、などの理由が挙げられますが、一番の理由はココネを巻き込みたくなかったからでしょう。ココネに母親について話すことはほぼありませんでした。

*2:ここでも補足をしますが、姫を国外に追い出すように要求してくる連合国は、自動運転に反対する国や世論の圧力の暗喩です。鬼については、何を表すのかは議論が分かれると思います。鬼が生じるのは、魔法(自動運転技術)が使える姫がいるからである、既存の技術では太刀打ちできず自動運転技術のみで解決しうる、ことを考えると、鬼が暗示しているのは世間からの目に見えない自動運転への圧力だと考えられます。タクシーやバスの運転手、自動車工場に勤める従業員など、自動技術は多くの人々の職に大きな影響を与えます。そして、魔法のみが鬼を退治しうるというのは、自動運転への否定的な意見やそれに関連して生じる会社への圧力を吹き飛ばすのは、自動運転の真価を世間に示していく他にはないということを示しています。

*3:どうしてそのときにハーツが会社に来ていたのかはちょっと分かりませんでした

*4:イクミがモモタローに向けて言った「あなたたちをいつか助けるわ」というセリフが伏線になってる