ふらいんぐうぃっち
【概要】
時期:2016年春アニメ(2016年4月~6月)
作者:石塚千尋
制作:J.C.STAFF
【あらすじ】
魔女の木幡真琴は、15歳になったら家を出るという「魔女のしきたり」に従い、横浜から遠く離れた弘前にある又従兄弟の倉本圭・千夏兄妹のいる一家で居候を始めることになる。使い魔の猫であるチト、倉本兄妹、同級生の石渡那央、そして幽霊や精霊といった不思議な存在たちとの日常が、美しい田園風景とともに描かれる。
【おすすめポイント】
日常系の中でも、何気ない日常を起伏なく淡々と描いている作品なので、『ARIA』や『あまんちゅ!』や『のんのんびより』と同系統だと思います。弘前の美しい自然とそれに寄り添う田舎暮らしの中、魔女である真琴と周りの人々と不思議な存在たちとの交流を描いており、日常の細かい描写も丁寧に描かれています。
放送開始当時はネット上ではほとんど話題にされておらず、放送時間も夜遅かった(しかも変則的な番組編成の影響で夜が明けたころに放送されたことも)にも関わらず、ほのぼのとした日常に癒された人たちが続出し好評だったため、円盤売上も3000枚という大台に乗り、2016年春アニメの中ではダークホース的な存在だったと言えます。
【感想】
とにかく、何気ない日常が丁寧に丁寧に描写されているため、見終わった後はいつも何とも言えない充足感に満たされる、そんな作品でした。そういえば、チトさんと近所を散歩するだけの回もありました。毎話振り返ってみれば、結局今回の話はなんだったんだ?と問いかけたくなるのですが、心は満足していました。ゆっくりとした時間がゆっくりと流れていく様子に心を預ける体験に、ある種の新鮮さまで覚えました。
登場人物の描写についても、いかにも「萌え」を前面にアピールしている作品が多い中、自然なやり取りや仕草の中でキャラの個性や可愛さが表現されており(特に千夏ちゃん)、なかなかの良作だと思います。『ご注文はうさぎですか?』や『きんいろモザイク』などの作品では、デフォルメされたリアクションを通じてキャラの可愛さを表現することも多いのですが、この作品についてはリアクションが非常に自然体でした。
さて、ここまで丁寧な日常描写と自然なキャラ描写について述べてきましたが、最後にもう1点だけ書いておきたいことがあります。それは、「そもそもこの作品は日常系なのか?」という点です。
そもそも、「日常系」と銘打っておきながら、よくよく考えてみると、一般的な日本の田舎の田園風景という日常の極致と、魔女というファンタジーな感じで非日常の代表格をミックスさせているので、本来ならば作品の世界観がちぐはぐになってしまい、日常系どころではなくなるはずなんです。ところが、この作品では不思議なことに、魔女という要素は見事に日常に溶け込んでいます。いえ、魔女だけではなく、精霊や幽霊という存在までも、魔女ではない一般人の倉本一家や同級生の那央が完全に受け入れることで、非日常と日常が違和感なく同居するという、面白い作品が出来上がっています。
もちろん、非日常と言っても例えばカッパやお化け、幽霊などの日本的な非日常的な存在ならば、日本の田園風景に溶け込むのも納得いくのですが、真琴たちが出会う不思議な存在たちは、日本的とも西洋的ともいえない、なんとも不思議な存在なんですよね。不思議な非日常を視聴者も違和感なく日常の中に受け入れさせたという点で、なかなか稀有な作品だと感じました。
とにかく、日々の生活で疲れた大人にはぴったりな作品だと思います。ぜひ、癒されて下さい。